雨ニモマケズ、あなたを待つ。 ねえ、あなたはいつ来てくれるの? わたしはいつものように問いかける。 あなたを待ち続けて、どれくらいの時間が流れたろう。 わたしは身体が弱かったから、あなたの帰りをこうして窓際でじっと待ち続けるしかなかった。 窓の外を眺めながら、まだかまだかとあなたを待ち続けて。 あなたの姿が見えた時は、胸が急速に熱を帯びて、心臓が飛び跳ねるようにときめいて。 あなたはわたしを視界に捉えると、笑顔で手を振ってくれて。 わたしは、その瞬間に一番幸せを感じていた。 長い時間話していると、身体に悪いからと言ってあなたはすぐ帰ってしまおうとする。 わたしはあなたが帰ってしまわないよういつも駄々をこねてみたけれど、あなたは優しく微笑んで、「もう帰らなきゃ」と言ってわたしの手を握る。 わたしはうつむきながら、その微笑みはずるいと、いつも思っていた。 同時に、あなたの手から伝わるぬくもりは、なによりも愛しく思えて。 そして、いつも通りに、あなたは「またね」と言って、わたしの部屋から出て行った。 窓の上から、ゆっくりと遠ざかるあなたの背中を見送った。 また明日、いつものようにわたしに会いに来てくれると、当たり前のように思ってた。 けれど、その日からあなたはここに来ることは無くなった。 あなたを待ち続ける日々は、とても辛かった。 それでもわたしは、あなたの「またね」といういつも通りの言葉を信じて、窓の外を眺めて、あなたを待ち続けた。 そのうち、身体を起こして、窓から外を眺めるのが難しいくらい身体が、心が痛んでいって・・・・・・。 両親とお医者さんがわたしを見つめる中、わたしはまぶたを閉じた。 あなたに恋い焦がれながら。 気が付いたら、わたしは一人でここにいた。 お母さんも、お父さんもいなくなっていた。 だけど、寂しくなんかない。 いつの間にか、わたしを身体を蝕んでいた悪いものがいなくなっていたから。 そのおかげで、あなたをずっと待ち続けられる。 雨の日も、風の日も、雪の日だって、あなたを待ち続けることが出来る。 あなたが、わたしに笑顔で手を振ってくれる瞬間を待ちわびて。 今日もわたしは、いつものように問いかける。 ねえ、あなたはいつ来てくれるの? ずっと、待ってるから……。 PR